白魔女学園

――じゃあ、役作りにも苦心されたんでしょうか？
相沢　役作りというか、自分自身とキャラクターをどこかリンクさせないと、演じる役の気持ちが理解できないかなと思って……。共通点がないか、探したんです。そうしたら、少し見えてきました。わたしはもともと、積極的に人と関わるのが苦手なタイプで、ずっとテレビを観たりラジオを聴いたりしながら過ごしていたんです。でも今はステージに立つのが楽しいし、ステージに立っていないと自分がダメになるような気がしているんですね。菊田梨紗も最初は傷ついて白魔女学園に入ってきたコだから、きっと昔には戻りたくないと思っている。だから、ああいう厳しい態度を取ることで、自分を保ってるんじゃないかなって。そう考えたときに、自分の中に菊田梨紗がスッと入ってきたんです。物語の中では悪役ですけど、親近感が持てて、好きになれましたね。だから、撮影ではとにかく、相沢梨紗のダメな部分が見えないように……カッコいい菊田梨紗を演じようと心がけました（笑）。

――演じるうえで参考にされたキャラクターなどは？
相沢　最初、『エースをねらえ！』の「お蝶夫人」という話が出て、なるほどと思いました。確かにこの作品は、アニメでたとえたほうがわかりやすい気がしたんです。わたしなりにイメージしたのは『少女革命ウテナ』の世界観ですね。あの作品も学園が舞台で生徒会が出てくるし、お互いに大切なものを守りたいという思いを持ちながらも方向性が行き違っていくという部分では、ちょっと共通するものを感じたので。

――台本を読んだ印象はいかがでした？
相沢　泣けましたね……。でんぱ組.incのメンバーが経験してきたこととか、そのときの気持ちなんかも形を変えて入っているので。ご覧になる方も、きっとキャラクターの誰かに感情移入して観ることができると思います。あとは「百合」の要素も個人的にはツボでした（笑）。きっと「百合」好きの女の子たちにもウケるんじゃないですかね？　……すみません、いきなりヘンなこと言って。

――いえいえ（笑）。アクションのほうはどうですか？　菊田梨紗の魔力は「銃」ですけど。
相沢　銃は内腿から出てくるんです。片手撃ちなんですけど、さすがにやったことがないので、むずかしかったですね。しっかり構えないといけないのに、どうしてもフニャッとなってしまって……。そもそもアクション稽古のときから「自分だけできなかったらどうしよう」って、不安で不安で（笑）。ただ練習自体は楽しかったんです。体育が嫌いなこのわたしが、練習しすぎて筋肉痛になったぐらいですから。今までに痛くなったことのない筋肉が痛くなって、「ここにも筋肉があったのか」と（笑）。

――他のメンバーはみんな新入生の役ですが、いかがでした？
相沢　みんな、がんばってましたね。（成瀬）瑛美ちゃんなんて、途中ですごいことになるんですけど、あの変わりっぷりは見どころだと思います。彼女は現代のナイチンゲールで、いつもみんなにパワーを与えてくれるんですけど、今回は楽しい役に見えて、実は……という。でも、新入生のキャラクターは基本的に、本人と近い印象ですね。いちばん違うのは、わたしかもしれません（笑）。あと、うっかり新入生の気持ちで台本を読んでしまうと、さっきも話したように泣いてしまうので、それを忘れるように気をつけていました。わたしはみんなにエチュード（訓練）を課す側だし、自分のやっていることを正しいと信じているので、常にその気持ちでいようと。だから辛かったですね。この痛みで、かなり魔力が上がったような気がします（笑）。

――共演シーンが多いとはいえ、メンバーと別のポジションというのは……。
相沢　寂しいときもありました。でも、同じ上級生役の（小宮）有紗ちゃんも（高良）光莉ちゃんもすごく優しくて。グループでお仕事をしていると、なかなかこういう機会がないんです。ライブで対バンするときはあっても、ゆっくり話したりする時間はないですからね。今回は何日も一緒にいるから、人間関係が育めました（笑）。それに、やっぱり彼女たちは女優として活躍しているので、現場でお芝居を見ているだけでも、いろいろなことを学べたんですよ。とてもありがたかったです。

――撮影で、これは大変だったな、というようなことは？
相沢　テンパったのは、新入生にチョーカーをつけてあげるシーンです。みんなに顔を近づけて、ひとりずつつけていくんですけど、緊張して、うまくいかなくて。冷や汗が出ましたね。自分のせいで時間が過ぎていく〜って。

――坂本浩一監督の印象は？
相沢　もう、常に元気！（笑）　お茶目でカワイイ人ですね。たぶん女子高でああいう先生がいたら好かれると思うんです。ふだんは冗談を言って笑わせてくれるんですけど、テストとか本番のときは、サッと真剣な表情になって。アクションも見本を見せてくださるんですが、それが、当たり前ですけど超うまいんです。空き時間とかに、キャストみんなと監督とで話しているときは、なんだか女子会みたいでした（笑）。

――今回の経験で得たものや、これからの活動に活かせそうなことは？
相沢　とにかく新しい分野に挑戦させていただけたことが大きいです。演技で学んだことをライブでも活かしていきたいですね。動きや表情の作り方というのはとても大事なので。

――最後に、公開を前にした思いをお聞かせください。
相沢　共演者の方々やスタッフの皆さんは、右も左もわからないわたしたちにとても優しく接してくださいました。この場を借りて御礼を言いたいです。あと、撮影期間中は何をやっているかを言えなかったので、ファンの皆さんの中には、みんなで朝から晩まで田植えでもやっているんじゃないかと思った人もいらっしゃったみたいですが（笑）、わたしたちは『白魔女学園』をがんばってました。是非、楽しみにしていてください！

――ねむさん自身は、どうなんですか？　「綿貫ねむ」という役柄は。
夢眠　ホン読み（脚本の読み合わせ）の段階では、わたしもやっぱり悩んでいました。「でんぱ組.inc」の中ではツッコミ役というか、わりとガーッとなんでも言うし、怒ったりもするタイプなので、こういう大人しいキャラを演じられるのかなって。でも、周りに相談してみたら、「夢眠ねむ」も「綿貫ねむ」っぽいところがあるよ、と言われて……。こんなにおっとりしていたり、人見知りだったりするのかなと、最初は意外でしたけど、自分でも気がつかないうちに、ちょっと壁を作ったりしていることがあるらしいんです。それを聞いて納得して（笑）、おっとりした人見知りの「綿貫ねむ」を身近に感じられるようになりましたね。だから自己紹介のシーンなんかは、もう「人見知り全開！」みたいな感じで演じてみたんです。演じているうちに、確かに本質的には似ているかも、と思えてきた部分もあって、そこからはやりやすくなりました。ただ、綿貫ねむちゃんが負っている心の傷は、自分にはイメージしにくいものだったので、その点だけは、最後までむずかしかったですね。

――その「心の傷」の原因となった出来事は、初日に撮影されたとか。
夢眠　そうなんです。イジリー岡田さんが、先生役で出演してくださって。あの有名な特技（高速ベロ）も、目の前で見られたんです（笑）。うれしかったんですけど、役柄としては喜んじゃいけないシーンなので、なんとか我慢しました。また坂本（浩一）監督が、そのシーンをすごく丁寧に、いろんなアングルから撮っていたんです。だから、綿貫ねむはずっと泣いているのに、後でモニターを観たら脚しか映ってなかったり（笑）。

――なるほど。脚だけしか映っていないカットでも、表情の演技もしているというわけですね。
夢眠　この場を借りて、強調しておきたいです。観るときは、そう思って観てください（笑）。

――その坂本監督はいかがでしたか？
夢眠　すごく楽しい監督で、いつも現場の雰囲気を和ませてくれますね。それに、演技でわたしが悩んでいるときはすぐに見抜いて、アドバイスしてくれました。全部を細かく指示するんじゃなくて、最後は自分で考えさせてくれるので、本当にやりやすかったです。シリアスなシーンが多いんですが、カットがかかった後は冗談を言ったり、お互いにふざけ合ったり。それこそ、授業中は真剣な先生に、休み時間は遊び相手になってもらっているような感じでした。

――キャストもイジリーさんの他は全員、女性ですもんね。ほとんど女子校状態。
夢眠　そうなんです。上級生役で出演している（小宮）有紗ちゃんとか（高良）光莉ちゃんは演技経験が豊富なので、実際にも先輩に教わっているような感覚がありました。個人的には、光莉ちゃんが演じている菱餅ニゲラの蹴り技がカッコよくて、超・憧れてます（笑）。わたし、ニゲラちゃんファンクラブの会員番号１番なんですよ。だから、もっとニゲラちゃんと絡みたかったですね。この作品で唯一、不満があるとしたら、それです。もしニゲラちゃんのスピンオフ作品をやるなら、率先して「やられ役」に立候補します。蹴られたいです（笑）。

――上級生には、「でんぱ組.inc」のリーダーもいるじゃないですか。
夢眠　そうですね（笑）。今回、梨紗ちゃんだけが別行動というのがわりと多かったので、リーダーの存在の重要さも感じつつ……リーダー離れもしなくちゃいけないかなって（一同笑）。

――アクションの話が出ましたが、その点については？
夢眠　最初、「魔法もの」と聞いて、あまりアクションが多いという想像はしていなかったんですが、むしろ「魔法もの」というのを忘れていただいて良いぐらい、アクション映画になってます（笑）。肉弾戦が盛り上がるんですよ。ニゲラちゃんもカッコいいけど、スタントで参加されている女性の皆さんも、むちゃくちゃ素敵ですね。わたしも少しですが、やってますよ。

――綿貫ねむの魔力は「炎」ですね。
夢眠　そうです。ファイヤーです（笑）。さすがに現場では体からファイヤーが出せないので、合成になるんですが、どんなふうに出るのか、今から楽しみですね。また、いいところで出るんですよ、これが。かなり役に立つので、注目してください。

――綿貫ねむと、白鳥もがの関係性も物語のポイントです。
夢眠　これはむずかしかったですね。ひとりのオタクとしては「百合」というものも理解しているんですけど、実際に経験がないことって、うまく気持ちを込めて演じられるのかどうか、不安だったんです。もちろん、ふだんも仲良しなんですけど、どちらかといえば、もがちゃんのほうがわたしのところへ来てくれることが多くて。今回の設定は真逆だから、もがちゃんは「遠慮しないで、もっと来ていいよ」なんて言うんですよ（笑）。ちょっとドキドキしましたね。

――クライマックスは、おふたりにとっても見せ場かと。
夢眠　ちょっと、エラいことになってましたね（笑）。あのシーンの撮影のときは、かなりハイになりました。アイドルとか、そういうことはかなぐり捨てて演じました。ああいうのも、きっとひとつの愛の形ですよね？　わたしとしては、最大限の表現をしてみたつもりです。

――撮影を振り返って、いかがですか？
夢眠　望んでも、なかなかできないような経験をさせていただきました。体当たりで、真っ向勝負を挑んで、ある意味で限界を超えたというか。グループとしても絆が深まったし、新しい発見がいくつもあったし、何よりも強くなれたと思うんです。うまく演じられたかは抜きにして……って、抜きにしちゃダメなんですけど（笑）、自分たちの奥底にあるものを引き出して、それをお芝居という形で剥き出したという感じでしょうか。本当に良いチャンスを与えていただけたと感謝しています。そう、感動したのは、撮影期間中の食事なんですよ。わたしたち、ふだんは５分ぐらいで食べなくちゃいけないことが多いんですけど、この現場では、食事タイムが大事なコミュニケーションの機会になっていて。

――そうか、ロケ弁だったり、撮影所の中で撮っているときは食堂だったり、スタッフ・キャストみんなで食べるんですよね。
夢眠　だいたい朝の６時と、12時と、夕方の６時。周りを見回すと、こんなにたくさんの人がこの映画に関わっているんだ、ってわかるんです。そこでひとりひとりと会話したりとか、お名前を聞いたりとか、「さっきのところはこうすればもっとやりやすいよ」なんてアドバイスをいただいたりとか……。なんだか、生きている実感みたいなものがありました（笑）。スケジュールは過酷でしたけど、そういう何気ないやり取りが心の支えになっていましたね。だってスタッフの方々は、わたしたちよりも寝てないのに、みんな笑顔で元気で。そういう姿を見て、もっとがんばろうと思えたんです。また皆さんとお仕事がしたいし、演技もやってみたい。それが、今の正直な気持ちです。

――雪野未鈴は、新入生グループの中でも立ち位置が独特というか。
古川　そうなんです。トータルの世界観の中では、ちょっと浮いているかも（笑）。いちばん暗いコかもしれませんね。「白鳥もが」とか「綿貫ねむ」も暗いけど、雪野未鈴の暗さは２人とはちょっと違う。それに、わたしだけペアがいないんですよ。もがとねむ、瑛美と彩音、それに夏代と冬子がなんとなくペアっぽいんですけど、雪野未鈴だけ余る（笑）。

――でも、一方で上級生の三雲杏がいるじゃないですか。
古川　そう！　雪野未鈴は杏先輩のことが好きなんだろうなって。この作品は意外と「百合」っぽいシーンが多くて、上級生の相沢梨紗が新入生の首にチョーカーをつけるところからしてドキドキするんですけど、雪野未鈴と杏先輩も、かなり際どいです。わたしはジーッと見つめられたり、見つめたりするのが苦手なんですが、そこは心を鬼にして……じゃないや、日本語間違ってますね（笑）。役に入り込んで、やりきってみました。杏先輩への気持ちをはっきり言葉にするシーンはないので、そのあたりは演技で伝わればいいなと思っています。そういう意味では、この作品では今まで見せたことがない古川未鈴を見せているかも。「でんぱ組.inc」の活動では見せない表情が出ているんじゃないでしょうか。

――ちょっと現場を拝見してたんですが、「シチューをセクシーに食べて」みたいな指示も坂本浩一監督から出てましたね。そういう注文にも見事に応えてました。
古川　口元のアップですよね。何日か撮っているうちに坂本監督の狙いはわかってきたので（笑）、できるだけ、その意図に沿えるようにと……。

――カットがかかった後、どよめきがありました。
古川　本来は苦手な分野なんですけど、がんばってみました。あれはメンバーにもウケたんです（笑）。

――役作りで心がけていることは？
古川　「役作り」とはまた違うと思うんですけど、わたしはなんでもまずアニメでイメージするんです。たとえばライブでも、アニメのキャラが歌っているのを想像して、それを真似して表現する。今回はお芝居ですけど、「アニメのキャラだったら、こういうときはどんな表情をするかな？」と考えて、そこから作ってますね。今回はお話自体がアニメっぽいので、それなりにうまくいってるんじゃないかと……。もちろん、むずかしいですけど。

――雪野未鈴の魔力は「糸」ですよね。これはＣＧで表現されると思うんですが。
古川　そうですね。だから現場で糸を操っているわけじゃないんですけど、そのぶん自由にできるというか。出てきた糸を不思議そうに見つめてみたりとか、自分で勝手に考えてやってます。もしかしたら、そういうのはＣＧのスタッフの方にご苦労かけたりして……。そうだとしたら、すみません（笑）。

――魔力に目覚めるのが遅くて、ちょっと焦ったりも。
古川　ああいう気持ちはすごく理解できました。自分には魔女の素質がないんじゃないかと悩むんですけど、「魔女」というのを外して考えれば、すごくリアルで生々しい葛藤なんです。女の子たちが観たら、きっと共感してくれると思います。

――撮影で大変だったことを教えてください。
古川　基本的には毎日楽しいんですけど、敢えて言うならロケで虫が多かったこと（笑）。どうしても自然の中だから仕方ないんですけど……すっごく苦手なので、死ぬかと思いました。また、特に夜間の撮影だと、照明に集まるんですよ。でも、スタッフの皆さんも疲れている中で、演技は素人同然のわたしたちが虫でＮＧとか、絶対に出せないでしょう。これは個人的に大きな戦いでしたね。一大決戦。絶対に負けられない戦いでした（笑）。

――体力的には？
古川　朝から晩まで撮影しているので、待ち時間にときどきクテンと寝ちゃったりしましたけど、辛さは全く感じませんでしたね。いい緊張感が続いているし、常に次の出番が待ち遠しいんです。そもそも、こんな恵まれた機会って、まずないですよね。すごく良い現場を経験させていただいているので、最大限がんばって、良い作品にしたい。そういう気持ちで取り組んでいます。メンバーも、みんな自分なりに考えて、一生懸命やってるんだなというのが見ていてわかるんです。ただでさえ、杏役の（小宮）有紗ちゃんとか、かすみ役の（山谷）花純ちゃんとかのお芝居を見ていると「やっぱりうまいなぁ」って刺激を受けるし……。毎晩、あまり寝る時間がない中でも、次の日に撮るシーンのことをずっと考えちゃいます。きっと、みんなもそうだと思いますね。

――先ほど、ライブの話が出ましたが、ライブ活動と演技は全く違いますか？　それとも共通点を感じますか？
古川　わたしの中では、どちらもエンターテインメントという認識で。観てくれる人たちの心にダイレクトに届くものという意味で、同じですね。エンターテイナーになるというのが自分の目標なので、『白魔女学園』をやれたことは本当に大きいし、うれしいです。素晴らしいスタッフの方々のおかげで、きっと良い作品に仕上がると思うので……完成したらファンの皆さんに「どや顔」をお見せしたいです（笑）。

――「塩見彩音」という、ご自身の役柄については？
藤咲　簡単に言ってしまうと、おバカなキャラで（笑）。だから、ほとんど素で演じています（一同笑）。塩見彩音は言葉をあまり知らなくて、言い間違いが多いんですが、わたしも台本で「沐浴（もくよく）」が読めなかったり……。

――坂本浩一監督からは、何か役作りの指示がありましたか？
藤咲　わりと自由にやらせていただいていて、喋り方なんかもふだんに近いですね。ただ、テンションは３割増しぐらいかもしれません。基本的には自分とシンクロするところが多いキャラなので、気持ちは入れやすかったです。あと塩見彩音は、みんなを「きゅん」付けで呼ぶんです。「ねむきゅん」はそのままなのでいいんですけど、「もがきゅん」はちょっと違和感がありましたね（笑）。

――お芝居で大変だったことは？
藤咲　お話の前半は楽しいシーンが多くて、後半はシリアスなシーンが増えていくんですけど、撮影の順番はバラバラなので、気持ちの切り換えがむずかしかったですね。あとはリアクションかな？　お芝居なので、次の瞬間に何が起こるかを知ってしまっているじゃないですか。でも、現実の世界ではわかりませんよね。だから、わざとらしくならないように、常に意識していました。それと、よく注意されたのは、わたしはつい、テストと本番で違う動きをしちゃうんです（笑）。別にわざとじゃなくて、さっきやったことを忘れているという……。

――なるほど（笑）。ちなみにアクションのほうは？
藤咲　わたし、仮面ライダーが好きなんですよ。それも変身する前より、いわゆる「中の人」が好きで。

――スーツアクターさんですね。
藤咲　今回、仮面ライダーシリーズを作っている東映さんの撮影所でお仕事ができるというので、それだけで胸アツでした。撮影所の中で騒ぐと怒られるので、できるだけ気をつけていましたけど（笑）。

――じゃあ、アクションにも興味があった？
藤咲　ありました。だから稽古にも参加したかったんですけど、学校の都合もあって、参加できなかったのが残念です。みんなが「筋肉痛になったよ」と言ってましたが、わたしはむしろ、筋肉痛になりたかったんです（笑）。劇中でもアクションシーンはほとんどなかったので、他のメンバーが羨ましかったですね。特に白魔女になる（最上）もがちゃんが……。塩見彩音の魔力は「大剣」なんですけど、もがちゃんのほうが剣を使うシーンが多いですから（笑）。

――かなりの過密スケジュールだったと思いますが、その点はいかがでした？
藤咲　学校の部活の朝練で５時起きとかには慣れているんですが、部活と撮影ではやっぱり、使う体力的にも全然違いました。エチュード（訓練）のシーンは、どれもけっこう体を酷使するんです。走ったり、おんぶしたり、プールに落とされたり……。でも、不思議なことに、何をやっても苦じゃなくて、むしろ楽しいんです。監督がいつもニコニコしていて、面白いからかな？（笑）

――いつも一緒に活動しているメンバーが「演技」をしている姿というのは？
藤咲　（相沢）梨紗ちゃんだけが上級生の役なんですけど、ふだんとは声のトーンも変えて、冷徹な感じを出しているのがすごいと思いましたね。役に入り込んでいるんです。あと、（古川）未鈴ちゃんの暗いイメージの役というのも新鮮でした。だから、自分が素に近い役を演じていると「これでいいのかな？」と不安になるんですよ（笑）。

――他に、ちょっとした裏話があれば、お聞かせいただきたいんですが。
藤咲　わたしが撮影のない日に、もがちゃんとねむきゅんが大事なシーンを撮っていたんですね。それで、現場から写メが届いたんですけど、ねむきゅんの姿がすごいことになっていて……！

――あ、それはもしかしてクライマックスの？
藤咲　そうです。台本には確かに、文字としてはそういうふうに書かれているんですけど、想像をはるかに超えてました（笑）。「ここまでやるの？」って。かなり衝撃的でしたね。

――写メでいきなり届くと、インパクトありそうですよね。
藤咲　その場にいなくて良かった気もするし、逆に生で見たかった気もするし（笑）。映像になるのを楽しみにしています。この作品は本当に、ちょっと怖いシーンもあれば、笑えるシーンも、セクシーなシーンもあるし、もちろんアクションもたくさんあります。最初から最後までギュ〜ッと内容が詰まっている映画なので、きっと満足していただけると思っています。楽しんでいただきつつ、作品に込められたメッセージを受け取ってもらえればうれしいです。どうか、よろしくお願いします！

――自己紹介の場が、オーディションのようなものだったと。
成瀬　そうですね。ビックリしました（笑）。メンバーのみんなの特徴が、それぞれのキャラクターに、全くそのままじゃないけど、うまく入っていて……。たとえば（相沢）梨紗ちゃんでいえば「しっかり者」という部分。（最上）もがちゃんはクールなところ。（夢眠）ねむちゃんは母性的なあったかさ。ピンキーちゃんのコスプレ好きも、演じる役柄に活かされているんです。その中で、（古川）未鈴ちゃんだけは本人と役のイメージにちょっと差があるかな？　でも、あれはあれで萌えるので（笑）、オッケーです。未鈴ちゃんのセクシーな表情は今まであまり見たことがなかったので、わたしにとっては新発見でした。

――やっぱり、ふだんを知っているメンバーだからこそ気づく部分だったり、逆に意外に思うところがあるんですね。
成瀬　でんぱ組.incって、これまでに本格的なお芝居をしたことがなかったんです。コントっぽいものはやったことがありましたけど、そのときと今回はやっぱり全然意味が違いますし……。だから、お互いがガチで「演技」というものに取り組んでいる姿も初めて見たんです。それがとても新鮮でした。わたしが心配していたのは、でんぱ組.incはインドア派のコが多くて、体力的に大丈夫かなって。自分はメンバーの中では体が強いほうなんですが、撮影の過酷なスケジュールをみんなが乗り切れるのかどうか、不安だったんです。でもフタを開けてみると、毎日みんな元気にやっているんですね。間違いなく疲れているとは思うんですが、それでもがんばれているのは、撮影が楽しいからだろうなって。本当に良い雰囲気の現場なんですよ。わたし自身も、演じていて楽しいシーンばかりです。

――それは現場を拝見していても感じました。
成瀬　とにかく坂本監督が常にお元気で（笑）。わたしは、今回でんぱ組.incが主演をやらせていただくにあたって、自分たちがいちばん元気なところを見せて、現場を盛り上げていかなくちゃと思っていたんですが、監督の笑顔には負けました（一同笑）。わたしたちよりも絶対に寝てないはずなんですけど……。

――監督自身が、楽しみながら撮影しているというか。
成瀬　キャストの一人一人にフレンドリーに接してくださるし、またキャラクターの魅力をどんどん引き出していこうとしているのが伝わってくるんですよね。もし自分がみんなをまとめる立場になることがあったら、監督のようになりたいと思いました。

――ところで、アニメがお好きだとうかがっていますが、今回の脚本は吉田玲子さんですね。
成瀬　そうなんですよ！　映画をやれるというだけでもすごいことなのに、吉田さんの脚本で演じることができるなんて……。作品はたくさん拝見していますし、今回もわたし的に「どストライク」な世界観で、最初に脚本を読ませていただいた時点でテンションが上がりました。女の子だけのサンクチュアリという時点でキュンキュンしますし（笑）、百合的な要素も入っている。一気に高まりましたね。

――ご自身の演じる役については？
成瀬　小田巻瑛美には、自分と似ている部分が多かったです。ちっちゃい頃から魔法少女アニメが好きで、何かあるたびに呪文を唱えてるっていう。ファンの方はご存知だと思いますが、それはわたしと同じなんですよ（笑）。古くは『美少女戦士セーラームーン』のシリーズから、もちろん『プリキュア』シリーズまでずっと観てますし、わりとマイナーな作品までチェックしてました。やっぱり「変身」への憧れが強いですね。

――小田巻瑛美が好きだったアニメに出てくる呪文が、ハッピープルプル……。
成瀬　ピープルン！（笑）　劇中でも何度も言うんですけど、シチュエーションごとに言い方が違ってくるので、けっこうむずかしかったです。わたしの中では、この呪文が出てくるアニメは、ちょっとセクシーな雰囲気かなって。勝手な想像ですけど（笑）。もし機会があったら、スピンオフで、自分で演じてみたいですね。それでなくても、この『白魔女学園』自体、コミカライズとかアニメ化とか、そういう方向へも広がってほしいんですよ。本当に良い作品だと思うので。キャラクターグッズ展開も、アリですよね（笑）。でも、そのためにはまず映画がヒットしなくちゃいけないので、一人でも多くの方に、この作品のことを知ってもらいたいと思っています。

――小田巻瑛美は、ある出来事をきっかけに変わっていきますね。
成瀬　わたしはでんぱ組.incの中でも明るく元気なキャラなんですが、それは作っているわけじゃなくて、ほとんど素の自分そのままなんです。だから後半のお芝居がファンの方の目にどんなふうに映るのか、今からすごく気になります。半分は不安で、半分はワクワク。もう、全力でやりきりました。うまくできているかはわからないんですけど……。

――小田巻瑛美の変化は、物語が急展開していくきっかけでもあります。
成瀬　心が弱くて変わってしまうというよりは、むしろ白魔女になりたい、世界を救いたいという強い思いから変わってしまう。そのあたりの微妙なニュアンスが表現できていればいいなと思っています。

――撮影を振り返ってみて、いかがですか？
成瀬　参加できて良かった、という一言に尽きますね。こんな素晴らしい機会をいただけて、ありがたかったです。でんぱ組.incのメンバーにとってはとても大きい、新しい挑戦でしたし、今回初めてご一緒した、女優のお仕事をメインでやっている共演者のみんなからはたくさんのことを学べました。作品自体が、最初にお話ししたようなところから始まっているので、わたしたち自身の経験とリンクする部分が多くて……。他のアイドルみたいに、きらびやかじゃないのがでんぱ組.incというグループの特徴だと思うんですが、『白魔女学園』を通じて、こんなコたちがいるんだ、ということを知ってもらって、興味を持っていただければうれしいです。

――坂本組の作品の印象は？
小宮　やっぱり、アクション監督も兼任されているということで、アクションが凄いというイメージがありました。わたし自身、『ゴーバスターズ』をやっていましたから、「またアクションに挑戦できるんだ！」とワクワクしていたんです。ただ、杏の魔力は「時間を止める」というものだったので、実際は予想したよりも少なくて。

――そうか、止めちゃったら基本、戦わなくていいですからね（笑）。
小宮　でも、監督は、当初は吹き替えの方が担当される予定だったシーンでも、「やりたいです」と言うと、全部ではないんですけど、できる範囲でやらせてくださるんです。だから、決して多くはなかったけど、アクションはやりきれたかなって。

――『ゴーバスターズ』でも、アクションには積極的に取り組んでいましたよね。
小宮　わたし、負けず嫌いなんですよ（笑）。今回と違って、前は男の子たちの中で女の子がひとりだったんですが、だからといって自分だけ、みんなと同じことができないのは情けないだろうと。自分も戦士の役なんだから、アクションも同じレベルでやりたいって、ずっと思っていました。『白魔女学園』でも、その経験が活かせましたね。

――クライマックスあたりとか、かなり壮絶な戦いになりますよね。
小宮　考えてみたら、わたしは人間と戦うのがほぼ初めてなんですよ（笑）。いつもは相手が怪人だったので、要するに面を被っていない相手とアクションをしたことがほとんどなくて。今回、人間同士で戦ってみて、とてもやりやすかったですね。相手の表情が見えているので、動きを合わせやすいんです。吹き替えで来られているのも人見（早苗）さんとか藤田（房代）さんとか、前から知っている方だったので、それもありがたかったです。女の子同士の戦いって、独特のものがあって、見ているだけでも引き込まれました。ご覧になる方にも、きっと楽しんでいただけると思っています。

――杏というキャラは、すごく魅力的に描かれていますね。
小宮　可愛らしい名前とは裏腹に……みたいな（笑）。『ゴーバスターズ』で演じた宇佐見ヨーコとは真逆なんです。台本を読んでいる段階から「早く演じたい！」と思っていました。生徒会側は（相沢）梨紗ちゃん、（高良）光莉ちゃんとわたしなんですけど、キャラクター分けが絶妙で。２人は新入生に厳しく接するんですが、杏は優しいんですね。ある時点で、本性を表すんですけど。

――正義のヒロイン役から一転して、というのは、抵抗なかったですか？
小宮　むしろ、ずっと正義だったので、悪役を演じてみたいと思っていたんです。だから、こんなに早くチャレンジできるなんて……。それも、なんていうか、「ザ」がつく悪役という感じなんですよね。「ザ・悪役」（笑）。今の自分に表現できるんだろうか、という不安もありましたが、せっかくなら、いちばん嫌われるぐらいの勢いでやってみようと。ガツガツ、貪欲にいきました（笑）。

――ヨーコとの違いでいうと、髪型もありますね。
小宮　監督の意見もあって、前髪はウィッグを使いました。メイクも大人っぽくしてみたんです。今回やってみて、そういう工夫ひとつで、こんなに気分が変わるんだなって。スッと役に入っていけたんです。周りの印象もかなり違っていたみたいですね。撮影所を歩いていても、この髪型とメイクで白魔女学園の制服姿だから、よく知っているスタッフさんも全然気づかない。「ヨーコですよ」と言ったら、ビックリされました。「そっかぁ、聞いたことのある声だと思ったんだよ」なんて言われましたね（笑）。そんな感じなので、『ゴーバスターズ』を観てくださっていたファンの方の反応が今から楽しみです。……ちょっと怖くもありますけど（笑）。

――でんぱ組.incの皆さんとの共演については？
小宮　みんな個性的で、素敵でしたね。仲良くさせていただきました。６人いて、キャラも見た目も被ってないのが、まず良いですよね。最初、ホン読み（台本の読み合わせ）をやったんですが、声も可愛くて……。監督が「アニメのドラマＣＤを聴いてるみたいだね」とおっしゃったのを覚えています。撮影のスケジュールは、特に出番の多い（最上）もがちゃん、（夢眠）ねむちゃんを中心に大変だったと思うんですが、現場ではみんな楽しそうにしていて、常に笑いが絶えないんですよ。お芝居にしても、本格的に取り組むのが初めてだとは思えないぐらい素晴らしかったです。

――これから作品をご覧になる皆さんへ向けて、一言お願いします。
小宮　アクションも見どころですが、とても深いお話でもあるんです。監督の狙いとしては、２回観ると、上級生の側の哀しみも見えてくるような作品ということだったんですが、本当にそう思いますし、是非２回、３回と観ていただきたいですね。新入生、上級生、そして（山谷）花純ちゃんが演じている白鳥かすみと、全員に物語があるので、いろいろな楽しみ方、感じ方ができると思っています。どうぞよろしくお願いします！

――そうか、そういう苦労があるんですね。ところで、今回のニゲラはかなりアクションシーンが多いようですが。
高良　アクションは、レッスンを受けた経験はありましたし、ショートムービー的なものを撮ったこともあったんですが、本格的に取り組むのは初めてでした。すごく楽しかったです。もう、ひたすら蹴って蹴って蹴りまくっています（笑）。

――設定では、魔力は「肉体強化」なんですね。何か武器を出すわけじゃなくて。
高良　そうなんです。体そのものが武器っていう。でも、別にムキムキになったりはしないんですよ。

――ちょっと、女の子のムキムキは微妙ですもんね（笑）。
高良　（相沢）梨紗ちゃんが上級生のリーダー的な存在で、新入生には厳しくて。（小宮）有紗ちゃんが演じている杏は優しいんです。ニゲラは何も言わないけど、常に新入生を監視していて、何かあったら蹴る……。撮影のある日は、常に誰かを蹴っていました（笑）。

――アクションの流れは、現場で説明を受けるんですよね？
高良　そうですね。本番までの短い時間に練習するんですけど、だんだん早く覚えられるようになってきました。自分でも、撮影が始まったころより少しは上達したんじゃないかと思っています。

――役作りの部分では、いかがですか？　特異な役柄なので、アプローチもむずかしいんじゃないかなと。
高良　自分との共通点が見つからないんですよ（笑）。強いていえば、あまり喋らないことぐらいですかね？　わたしは少ない人数だとよく話すんですけど、大人数が集まると聞く側にまわることが多いので……。似ているといえば、その程度かもしれません。

――ニゲラもやっぱり他の生徒と同じように、心に傷を持っていて、マスクの下にも秘密があるようですが。
高良　この作品は「傷ついた少女たち」の話なんですけど、わたし自身はさすがに、白魔女学園から入学案内が来るほど傷ついた経験はないんです。もちろん悩んだりすることはあるんですが、それをあまり引っ張らないんですよ。何かがうまくいかなかった場合は、きっと神様がそういう試練を与えているんだろうな、と思うほうなので。だから、その点でも自分とニゲラを重ね合わせるのはむずかしかったですね。

――でんぱ組.incをはじめとする共演者の皆さんとのコミュニケーションは？
高良　けっこう人見知りなので、最初は「みんなと話せるのかな？」って不安だったんです。特にでんぱ組.incの皆さんはグループなので、気安く入っていけないかなと。でも、撮影が始まってみたら、とても気さくな方ばかりで。普通に話せるし、話しかけてもくれるし、学校みたいな感じです（笑）。みんな個性が豊かなので、話の内容も楽しいんですよ。ストーリーはシリアスで、どちらかというと暗いシーンやショッキングなシーンが多いんですけど、現場は楽しくて、本番じゃないときはずっと笑ってます。あ、オンとオフの切り換えは、ちゃんとしてますよ（笑）。

――今回は坂本浩一監督の作品です。
高良　監督がまた、常に明るい雰囲気を作ってくださるんです。それが大きいですね。監督の作品は、撮影に入る前に仮面ライダーの映画を拝見しました。アクションがすごいのと、ところどころにセクシー要素が入っているのが印象的でした（笑）。

――劇中で着ている制服の印象は？
高良　衣裳合わせのときから「かわいいな」と思っていました。ここだけの話……わたしはお母さんと同じ中学に通っていたんですが、お母さんの時代と制服は一緒だったんです（笑）。だから、今の感覚だとちょっと古かったんですよ。そんなこともあったので、今回の白い制服はうれしかったです。ただ、欲を言えば、白魔女のコスチュームも着てみたかったですね。それに、新入生は水着とかネグリジェとか、いろいろ劇中で着替えているんですが、上級生は制服だけなので、ちょっと残念でした。

――さて……ニゲラは最後まで喋らないわけではないんですよね。
高良　そうです、喋ります（笑）。やっと台詞があったと思ったら……「ええ〜っ！」という展開で。台本を読みながらビックリしました。

――ということは、ニゲラの動向からも、目が離せないということで。
高良　それぞれの「痛み」とか過去がしっかり描かれているし、アクションもふんだんにあるので、いろいろな楽しみ方ができる作品だと思っています。個人的にはアクションを観てほしいですけど、みんなの魔法も、現場では映像がどうなるか想像できなかった部分が多いので、どんなふうに仕上がっているかワクワクしますね。完成が、今から待ち遠しいです！

――アクションシーンもありましたし。
山谷　スカートが、ひらりと（笑）。前半ではワイヤーに吊られたカットもあったんですが、あれは当日いきなり「今日ワイヤーやるからね」って。高所恐怖症なので、どうしようと思ったんですけど、不思議なもので、カメラがまわると気にならないんです。あっという間に終わった感じでした。

――それを経て、今回はもう「ご指名」という形ですよね。
山谷　作品のタイトルよりも先に、役名を聞いたんです。監督から電話をいただいて、「かすみという役名にしたから出てほしい」と。

――いわゆる「アテ書き」（脚本の段階から演じる役者を想定したうえでキャラクターを作っていくこと）だったんですね。
山谷　それをうかがって、驚きました。もう、うれしくて、「やります！」とすぐに飛びついたんです（笑）。タイトルとか、お話の内容を聞いたのは、その後でした。

――実際に台本を読んでみて、いかがでしたか？
山谷　かすみは、たったひとりのお姉ちゃんに相談しても、その思いを受け止めてもらえなくて……。かすみの深い哀しみを想像するのはむずかしかったんですが、すごくやり甲斐のある役だなと思いました。

――姉の白鳥もがにとっては、それがトラウマになっている。物語が展開していくにしたがって、かすみのことも次第に明らかになっていきますね。
山谷　後半でかすみがお姉ちゃんに言う台詞は、言葉通りの意味じゃないんだろうなって。本当は、言葉にしていることと、かすみの思いは真逆なのかもしれない……そんなふうに思いながら台本を読みましたし、演じるうえでも、意識するようにしました。たとえば「違う！」っていう台詞を言っているときも、かすみは何がどう違うのか、逆に何が正解なのか、その時点ではわかっていない気がしたんです。心のどこかで、お姉ちゃんに助けを求めているような……。そういったアンバランスな部分を、どう表現していくかというのが大きな課題でした。

――突き詰めれば、『白魔女学園』は白鳥姉妹の物語ともいえます。
山谷　（最上）もがちゃんが演じる「白鳥もが」も、すごく考えることが多い、大変な役だろうなと思いました。

――役の上での「お姉ちゃん」である最上もがさんとの共演は、いかがでしたか？
山谷　お会いするのを楽しみにしていたんです。初対面は衣裳合わせの日でしたね。第一印象としては、「世の中にこんなキレイな人がいたのか」と。思わず見とれてしまいました。実際に共演してみて思ったのは、「なんでもこなせる人だな」っていうことと、外見だけじゃなく、内面も美しい人なんですよ。人間として尊敬できるんです。「妹」としては、ときどき「よしよし」って頭を撫でてもらっていました（笑）。自分が長女なので、お姉ちゃんが欲しかったから、夢がひとつ叶いましたね。

――でも、お芝居ではシリアスなシーンが多いでしょう。
山谷　そうなんです。ぶつかり合ったりもするんですが、演じているうちに、役柄としてのかすみと同じように、自然に「負けたくない」という気持ちも芽生えてきて……。そこは迷うことなく、やれたと思っています。

――グループとしての「でんぱ組.inc」の皆さんの印象は？
山谷　まずはキャラに圧倒されましたね（笑）。みんな個性はバラバラなんですけど、それでいて、やっぱりグループだなって思える独特のムードがあって。わたしは共演シーンが少ないんですが、それぞれがすごく真剣にお芝居に取り組んでいることが伝わってきましたね。

――アクションについては？
山谷　アクション練習ではいろいろなことをやりました。教えてくださる方々は、誰がどういうことが得意なのかをすぐに見抜くので、あれだけキャストの人数が多くても、アクションにも個性が出るんです。蹴りが上手いコは蹴りが多くなるし、そういうのは現場で見ていても面白かったですね。

――今回、「坂本組」出演２作目でしたが。
山谷　監督は今度の現場でも、いつもニコニコしていて（笑）。気さくに話しかけてくださったり、とにかくキャストがやりやすい環境を作るのがうまいんです。わたしとしては、監督に求められているものを出していくことに集中できましたし、短い期間ではありましたが、濃い経験でした。ご覧いただく方には、もがや、かすみや、みんなの純粋な思いを感じていただければうれしいです。ラストも、すごく良い終わり方だと思っているんですよ。

――最後に、今後の目標などを。
山谷　雰囲気のある女優になりたいです。でも、そのためには自分自身がしっかりした芯を持っていないとダメだと思うので、今は自分の知らないことを勉強したり、たくさんの作品を観たりしながら、良い影響を受けようと。少しずつ視野を広げて、感性も磨いていきたいと思っています。

――最初は衣裳合わせあたりから、でしょうか。
相川　そうでしたね。制服は、ちょっと恥ずかしいけど可愛かったです（笑）。アニメに出てくるような感じですよね。あとは水着もあったのでビックリでした。わたしは体が小さいので、試着のときに「小学生みたいだね」とか言われてたんですよ（笑）。

――プールのシーンは、冬子と夏代にスポットが当たりますね。
相川　蹴り落とされますからね（笑）。さすがにそういう経験はなかったので、たくさん練習しました。そのうちに、落とされるのが快感になってしまって（笑）。

――それは少々、危険な兆候ですね（笑）。冬子の役作りについては？
相川　今回は登場人物が女の子ばかりでしょう。だから、他のキャラクターと被らないようにするにはどうすればいいか、最初は迷ったんです。でも、でんぱ組.incのメンバーがすごく個性的なんですよね。こうなると、もう被る心配がないなって（笑）。あとは全体を見回したときに、ちょっと古風な清楚さというか、そういう設定のキャラがいないと思ったので、それを意識しながら演じてみました。

――撮影はいかがでしたか？　先ほど、映像にはあまり慣れていないということでしたが。
相川　幼いころからバレエをやっているので、人に見られること自体は緊張しないんです。ただ、映像は舞台とは違って、すべて順番に演じるわけではありませんから、気持ちをつなげるというのがむずかしかったです。それこそ初登場のシーンは撮影の後半に撮りましたし。そのとき、そのときの冬子の心情を考えながら、自分なりに表情を作って演じていたつもりなんですが、ちゃんとできていたかどうか……。やることが多い日は、頭がパンクしそうになっていました（笑）。特に今回のお話は、非日常の世界じゃないですか。だから簡単にイメージできないシーンが多いんです。その中でアクションもやって、台詞も言って、というのは自分にとっては大変でした。それと同時に、今まで何気なく観ていた映像の作品が、ものすごく手間をかけて、工夫して撮影されているということに気づいて驚いたんです。映画の観方が変わるぐらい、大きな出来事でしたね。

――冬子の魔力は「ブーメラン」ですね。劇中で使われた小道具を拝見すると、意外に大きいなと思いました。
相川　普通に想像するブーメランよりは大きいですね。たぶん長さにして１メートルぐらいはあるのかな？　だから投げると体が持って行かれるんです。わたし、腕の力もないので（笑）。魔力を使っているはずなのに、結局は筋肉痛になりました（一同笑）。

――魔法って、やっぱり憧れます？
相川　そうですね。でも、イメージとしては魔法で戦うというよりは、羽根が生えて妖精みたいに飛べればいいな、とかそういう方向です。可愛いスティックも持ちたいですね（笑）。今回は魔力バトルが中心ですが、ストーリーとしては大好きです。キャラクターそれぞれに過去があったり、表の顔と裏の顔があったりするのが面白いなって。

――でんぱ組.incの皆さんと共演した感想は？
相川　「アイドルだ〜！」っていう感じですね（笑）。空き時間があったら、常に歌ったり踊ったり、キャピキャピしているんです。じっくり話し込んだりする時間はなかったですけど、わたしとしては、眺めているだけで楽しくて、ずっと笑っていました（笑）。

――坂本浩一監督の印象は、いかがでした？
相川　絶対に疲れているはずなのに、逆にわたしたちに「大丈夫？」って常に気を遣ってくださって。優しい方だなと思いました。「監督」っていうと遠い存在のイメージだったんですが、坂本監督はわたしたちの目線まで下げて、会話をしてくださるんです。そのおかげで、気がラクになった瞬間もかなりありました。

――冬子については、わりと序盤に激動の展開がありますね。
相川　「まさか！」って（笑）。冬子は、台詞自体は少ないんですが、そのぶん、表情に込めた部分が多いので、そのあたりを観ていただければうれしいです。今回、アクションを含めたお芝居を経験できたことは、とても良かったと思っています。もちろん課題も残ったので、次の機会に活かしていきたいです。アクションも、またやってみたいですね。今度も痛めつけられる側でもいいので……。あっ、別にＭじゃないですけど（笑）。

――オーディションではお芝居の他に、面談のようなことも？
白石　そうですね。お芝居は、三雲杏と雪野未鈴のシーンをやりました。あとは自己紹介。今ルームシェアをしていて、引っ越しを考えているという話をしました。理由を聞かれて、同居しているコがいつも散らかしっぱなしだから、と言ったら爆笑されたんです（笑）。

――手応えはどうでしたか？
白石　他のコたちが可愛いので、正直言ってムリかなと……。ただ、終わり際に坂本（浩一）監督と一瞬、目が合った気がして、それに賭けてました（笑）。決まったと聞いたときはうれしかったです。特撮とか、アクションものがやりたかったので。まだ事務所に所属して間もないのに坂本監督の作品に出られるなんて、夢のようでした。しかも東映さんの作品で、大泉の撮影所でお仕事ができるという……。この喜びを、日々噛みしめています（笑）。

――ちなみに最近ご覧になった作品で、印象に残っているものがありましたら。
白石　最近ではないんですけど、アクションに興味を持つきっかけになったのがタイ映画の『チョコレート・ファイター』（08年）です。あの作品の主演の女優さん（ジージャー・ヤーニン）が自分でアクションをこなしているのを観て、すごいと思いました。自分にとっては、とても衝撃的だったんです。東映さんのヒーローものでは『仮面ライダー龍騎』（02年）が印象に残ってますね。あのころ、日曜に習い事をしていて、それに行く前の時間帯に放送されていたから、よく観ていました。そういえば『白魔女学園』は、ちょっと『龍騎』と共通する部分もありますよね。

――確かに。ところで、百田夏代という役はいかがでした？
白石　わたしはあまり言いたいことをはっきり言えない性格なんですけど、夏代ちゃんは気が強いんですよ。そういう意味では、気持ち良く演じられる役でした。上級生の言っていることが理不尽だと思ったら口に出すし、雪野未鈴ちゃんにも「チクリ魔」と言ったりして……。本人のいないところで言うわけじゃなくて、ちゃんと直接言うのがいいなって。かなり自分と違うので、切り換えもしやすかったんです。

――アクションについては？
白石　衣裳合わせの日に稽古をやったんですが、楽しかったです。ひとりずつ衣裳合わせに呼ばれていくんですけど、「今は呼ばないで！」と思ってしまうぐらい、夢中になってました（笑）。いい汗をかきましたね。夏代は、ニゲラと戦うシーンがあるんですが、ニゲラ役の（高良）光莉ちゃんがもう、すごい迫力なんです。光莉ちゃんは、ふだんは可愛らしい感じなんですが、役に入ったときのギャップが激しくて、さすがだなと思いました。あいにく撮影の日は雨が降ったり止んだりという状況だったんですが、わたしにとっては印象深いシーンになりましたね。芝生の上に転がったり、血のりを含んで口から吐いたり。血のりは「いい吐きっぷりだったよ」と褒められました（笑）。

――「学園もの」で「魔法少女もの」だけど、血のりを吐くという（笑）。
白石　でもアクション映画なので（笑）。こういう作品の魅力って、真剣勝負をやるところにあると思うんです。それこそ生き死にがかかっているから、みんなが極限状態なんですよね。そんな中で、ただ戦うだけじゃなくて、今回でいえばイジメの問題や、虐待の問題が描かれていたりする。見た目のカッコ良さと、物語の奥深さの両方があるので、個人的にも『白魔女学園』は大好きな作品です。全員が痛みを抱えていて、ある意味では誰も悪くない。台本を最初にいただいたときも、本当にハラハラしながら読んだんです。たぶん観ていただければ、同じように感じてもらえるんじゃないかと思っています。

――でんぱ組.incの皆さんの印象は？
白石　みんな「これは誰にも負けない！」みたいなものを持っているじゃないですか。そのことがまず、すごいなって。やっぱり「極める」って大事だと思うんです。全員に個性があって、魅力的なグループだと思いました。

――白石さんも何かを極めてみたいと？
白石　そうですね。たとえば……すみません、面白いことが浮かびませんでした（笑）。

――いえ、こちらもムチャぶりしてしまいました（笑）。質問を変えます。自分のやった役の他に、演じてみたいキャラクターは？
白石　ニゲラちゃんかな？　寡黙なキャラなのに存在感があったので。あと（成瀬）瑛美ちゃんやピンキーちゃんが演じたような明るいキャラにも憧れます。自分にはできそうにないですけど（笑）。『白魔女学園』に限らない話でいうなら、わたしは悪役をやってみたいんです。悪女というよりは女スパイとか、『ヤッターマン』に出てくるドロンジョのような……。

――それはアピールしておくと「吉」かもしれませんね。最後に、撮影を振り返って一言お願いします。
白石　２週間弱ぐらいの撮影だったんですけど、わたしはまだまだやりたかったです（笑）。坂本監督の雰囲気作りもあって、常にのびのびと、楽しくやらせていただきました。夏代の魔力は「衝撃波」なので、映像でどんなふうに仕上がるのか楽しみにしています。本当に面白い作品ですから、是非ご覧になってください！

●キャラクターの創造
　脚本を書く前に「でんぱ組．ｉｎｃ」の皆さんと会う機会はなかったんですが、企画を立てるにあたって高橋プロデューサーたちが彼女たちに取材したときの資料や、映像資料などをいただいて、いわゆる「アテ書き」（キャスティングを想定してキャラクターを作ること）で進めていきました。とにかく女の子しか出てこない世界だから、それぞれの個性が被らないようにしなくちゃいけない。「これで間違いない！」というような確信はなかったですけど、台詞一つをとっても、他のキャラに言わせても成立するような「置きに行く」台詞は、極力書かないようにしようと。そのキャラならではの台詞や言い回しを考えて、観る側の印象に残るようにしたいと思いました。ただでさえ、人数が多いですから。小田巻瑛美が子どものころに観ていた魔法少女アニメに出てくる呪文……「ハッピープルプルピープルン！」っていうのは特に深い意味はなくて（笑）、感覚で出てきたものですね。脳天気な感じがする呪文がいいんじゃないかって。

●緊密な構成
　今回、ネット版は１話につき約10分程度で、全10話。それを一本にまとめた劇場版も公開されるわけですが、そういう特殊な構成なので、ネット版の各話ごとに盛り上がりを設定する必要があったんです。どの回でも何か大きな事件が起こることによって、「次も観たい！」と思わせなくちゃいけない。これは最初に全体のプロットを作った後、高橋プロデューサーが中心となって流れを整理してくれたので、かなり助けられましたね。速いテンポで、次から次へと展開していくので、途中で飽きさせない作りになっていると思います。撮影スケジュールの都合で削らざるを得なかった部分もあるんですが、それはそれで、むしろ内容的には濃くなったかもしれません。

●作品の仕上がり
ある種の妖しさもあり、美意識が貫かれていると感じました。坂本監督の演出で、一本しっかりとした筋が通っているんです。（取材時点では）まだオールラッシュを拝見した段階ですが、全体の印象としては、美しい映像を見せていただいたなと。「白」を効果的に見せたいとイメージしていたんですが、演出でも「白」がきっちり強調されていて。衣裳や照明もそうですが、他に生徒会室の美術なども素晴らしかったと思います。
それと「でんぱ組．ｉｎｃ」の皆さんをはじめとするキャストの方々が、とてもがんばってくれていました。久しぶりに実写作品に参加してみて、生身の役者さんが演じることで生まれるパワーというのをあらためて感じましたね。本人たちの解釈が入ることによって、想定外のパワフルさとか、あるいは可憐さなどがうまく出ていました。わたし自身は実写を書く場合もアニメを書く場合も、キャラクターを血の通った存在にしたいという思いは変わらないんですが、今回は良い形でハネてくれた感じがしますね。
　映像作品全体のことでいうと、アニメと実写のボーダーレス化が進んでいると思います。アニメは昔から日常とファンタジーの両方を描いていましたけど、最近は特撮に限らず、実写作品でもファンタジーっぽいものや、キャラを前面に出したものが増えてきていますよね。昔はアニメでしかできなかった表現も特撮やＣＧの技術が進化したことによって可能になってきていますし……。ある意味で、『白魔女学園』という作品の成り立ちも、今の時代を象徴している気がします。

●多彩なキャラクター
　キャラ設定は、「でんぱ組．ｉｎｃ」のメンバーが演じる役については、僕や高橋プロデューサーが本人たちに取材した内容や、僕らのほうで乗せたアイデアを玲子さんに伝えて、まとめていただきました。僕らとしても、彼女たち自身の持ち味を膨らませる方向でいくのが良いだろうと思っていて。本人と何らかの共通点があったほうが、感情移入もしやすいはずなので。玲子さんが作ってくださったキャラや台詞は、みんなにも好評でした。だからキャラ作りも、最初のホン読み（脚本の読み合わせ）のときからノリノリでやってくれていましたよ（笑）。けっこうアニメ声のコが多いから、ホン読みをやっていると、まるでアニメのドラマＣＤを聴いているみたいでした。
　実際の撮影は、わりと大変だったんです。日数的にはぶっちゃけ、いつもの仮面ライダーや戦隊を２話持ちで撮っているときと変わらない。あっちは２話で合計の尺が45分弱ですけど、こっちは同じ日数で約10分×10話分を撮りました。要するに、１日につき１話分ぐらいを撮っていたことになりますね。だからもう、朝はだいたい６時出発で、その日のノルマを撮り終えるまで続けるから、撤収はほとんど深夜です。強行軍だから、スタッフにもキャストにも苦労をかけました。でも「でんぱ組．ｉｎｃ」のみんなも、他のキャストも、文句一つ言わず、表情にも出さずに、ずっとがんばってついてきてくれた。そのことには本当に感謝しています。主役の（最上）もがちゃんなんて特に出ずっぱりで、撮影中にも痩せちゃったぐらいハードだったんですが、「しばらく控え室で休んでいてもいいよ」と言っても、現場で撮影を見学しているんです。（夢眠）ねむちゃんは独特の柔らかい雰囲気で癒しのオーラを出してくれていたし、（古川）未鈴ちゃんには、こちらの意図をしっかり汲んでくれる頭の良さを感じました。ピンキー（藤咲彩音）は学校もあったりして忙しかっただろうけど、やっぱり常に明るくて。ただ、（成瀬）瑛美ちゃんをおんぶするシーンで痙攣したときは「もっと身体を鍛えたほうが・・・（笑）」と思いました。だって手足とかも凄く細いんですよ～。（相沢）梨紗ちゃんは「でんぱ組．ｉｎｃ」の中で、ひとりだけ上級生の役だったんですが、キャラの特徴をきっちりつかんで演じてくれましたね。
　かすみ役の（山谷）花純ちゃんについては、去年撮った『仮面ライダー×仮面ライダー　ウィザード＆フォーゼ　ＭＯＶＩＥ大戦アルティメイタム』のときに演じてもらったルビィという役がすごく良かったので、もう役名の段階から彼女を想定して、重要なポジションのキャラをお願いしました。杏役の（小宮）有紗ちゃんには、彼女が一年間がんばった『特命戦隊ゴーバスターズ』のヒロイン・ヨーコとは違うイメージの役をオファーして、新しい魅力を引き出したかったんです。ヨーコを知っている人ならビックリするような演技を見せてくれているので、楽しみにしてほしいですね。ニゲラ役の（高良）光莉ちゃんは、ずっとマスクをしているというむずかしい役だったんですけど、そのぶん、アクションはいちばんやってもらいました。彼女の蹴り技は凄かったですよ！
　冬子役の（相川）結ちゃん、夏代役の（白石）さえちゃんを含めて、可愛い女の子ばかりに囲まれて撮影していたから、僕は現場では楽しいばかりで、全く疲れなかったんです。ほとんど竜宮城にいるような気分でした。ただ、そんな中に特別な存在がいまして……。それが瑛美ちゃんです。みんな元気な「でんぱ組．ｉｎｃ」の中でも、特にテンションが高くて。彼女に何か指示を出したりするときだけは、気合いを入れないと負けちゃう気がしたんですよ。確か、他のメンバーから「それは無謀な挑戦です」と言われたんですが、本当にすごかった（笑）。ある日の最後の撮影が、瑛美ちゃんの重要なシーンで。とにかくここを乗り切るぞ、と思っていたら、予定表を見たら翌朝の一発目も瑛美ちゃんのシーンだったんです。このときはさすがに僕も、ホセとの試合を終えた矢吹丈のように、真っ白に燃え尽きていました（笑）。あ、でもこれは瑛美ちゃんを責めてるわけじゃないですからね。いい試合をしたなぁ、という感じで（笑）。芝居も面白かったんですよ。彼女はテストと本番で芝居が変わって来る「活きた芝居」をする娘なんです。「こうなって、こうなるから、こう動いてね」とか説明しても、「わかりましたーっ」って言ってくれるんだけど、本番では違うことをやっちゃうんですよ。だから、瑛美ちゃんには型にハマった芝居を要求しないことにしました（笑）。また玲子さんが書いてくれた「小田巻瑛美」というキャラが、すごくハマってたんです。本人のことを知っていたのかというぐらい、ピッタリで。どのキャラクターも良いですけど、瑛美ちゃんのハジケっぷり、壊れっぷりは必見だと思います（笑）。

●全力投球＆完全燃焼
　アクションあり、ホラーあり、サイコサスペンス風味ありと、いろいろな要素を込めた作品なんですが、最終的に目指したところは、キャラクターに魅力を感じてもらうことなんです。「でんぱ組．ｉｎｃ」のメンバーをはじめとする登場人物のことを「可愛かった」「キレイだった」と思ってもらえれば、一つの目標は達成できたかなと。それと、単なるアイドル映画じゃなく、どこか心にひっかかりを残せるような映画にしたかったんですが、玲子さんの脚本もあって、その点もクリアできたんじゃないでしょうか。僕はついやりすぎちゃうというか、これでもかと見せ場を盛り込まなければ気が済まないんですが、今回もサービス満点です（笑）。アイドルファン、アニメファン、特撮ファンと、幅広い層に喜んでいただけると思いますし、僕としては、それぞれの垣根を取っ払うぐらいのつもりで臨んだので、ここからさらにこういった路線が発展していけばうれしいです。劇場版もあり、そしてネット版はどこからでも観られますので、どうかよろしくお願いします！